直径4.0〜40mmの球頭パンチ3種類による、金属の極薄板及び箔の純粋張出し加工を行い、限界張出し深さに及ぼす板厚及び工具寸法の影響について研究した。 用いた試料は、板厚0.2〜0.02mmのアルミニウムの極薄板及び箔、板厚0.035mmの銅箔である。さらに比較のため、板厚1.0mmのアルミニウムの薄板と板厚0.6mmのりん脱酸銅の薄板についても実験した。いずれの試料も焼鈍をした。 パンチ・ブランク間の潤滑は、テフロン膜にマシン油を塗布する場合、グラファイトグリース及びマシン油と比較的低摩擦状態で実験した。これから以下のような結果が得られた。 板厚が厚くなるほど、限界張出し深さは大きくなる。このことは、通常の板厚の場合にはすでにいくつかの報告がある。今回0.2〜0.02mmの箔についても、同じような結果が得られた。同じ効果を与える方法としてブランクを重ね合わせることを考えた。重ね合わせる方法としては、同じブランクを2枚〜5枚、板厚の異なるブランク又は種類の異なるブランクの重ね合わせについて実験した。その結果、同じブランクを2枚または3枚重ねることによっても限界張出し深さの格段の向上が得られた。その他、材種または板厚などの各種組み合わせ方によっても、限界張出し深さの格段の向上が得られることが分かった。半径方向の板厚ひずみ分布をパンチ行程を追って調べることによって、上述の理由を説明できることがわかった。すなわち、破断危険部にひずみが集中することを防止し、変形域全体にできるだけ一様にひずみが分布するような成形法を使えばよい。潤滑法もその一つと考えられるが、外側からもう1枚のブランクを重ねることによってもその効果が得られ、限界張出し深さが格段に向上した。さらに、二枚重ねの場合ブランク間を潤滑することによってひずみ分布が変化することや破断状況が変化することもわかった。
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