研究概要 |
本研究では,イオン窒化時間が異なる歯車に対して,パルセ-タ試験機を用いて曲げ疲労試験を実施し,曲げ疲労限度を求めるとともに,曲げ疲労過程のAE波形,AE事象計数総数,AE事象計数率,AEエネルギー総数,AE振幅分布およびき裂長さの測定,AE波形の周波数分析を行って,これらの歯車の曲げ疲労損傷のAE特性について明らかにするとともに,浸炭焼入れ,S45C調質およびオーステンパ球状黒鉛鋳鉄(ADI)歯車の場合との比較検討を行った。その結果次のようなことが明らかになった。 1.シオン窒化歯車の曲げ疲労過程のAE波形の振幅は,浸炭焼入れおよびADI歯車の場合と同様に,疲労過程の初期には小さいが,き裂発生直前および直後にはかなり大きくなる。 2.イオン窒化歯車の曲げ疲労過程におけるAE事象計数総数,AEエネルギー総数は,き裂発生直前からき裂発生・進展とともに徐々に増加するが,浸炭焼入れ歯車の場合ほど急激な増加は認められなかった。 3.イオン窒化歯車の曲げ疲労損傷のAE波形の最大振幅は,浸炭焼入れ歯車の場合とほぼ同程度である。 またAEセンサーを2個とローカルプロセッサを用いた到達時間差測定法についても検討を加え,この方法により損傷発生部位からのみのAEを,より正確に検出できることを確かめた。次年度以降においては,セラミックス歯車の曲げ疲労試験を実施し,疲労過程のAE測定を行って,セラミックス歯車の曲げ疲労損傷のAE特性について明らかにするとともに,到達時間差測定法を運転中のローラおよび歯車のAE測定に適用し,AEによる運転中の歯車の曲げおよび歯面疲労損傷のAE特性について明らかにすることにより,AEによる歯車損傷の予知・監視法の確立をめざす。
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