研究概要 |
最近,アルミニウム合金複合材料に関する研究・開発が盛んに進められているが,本研究ではこの複合材料の腐食性環境中摩擦・摩耗挙動を詳しく知ることを目的として,本年度は主として湿潤空気中とマシン油中において摩耗試験を行った. 軸受鋼球対平面(複合材料)の接触型式による往復摩耗試験では,相対すべり全振幅と荷重を変化させ,摩擦係数や摩耗量を測定した.湿潤空気中におけるアルミナ短繊維強化材の摩擦係数は母材のAC8Aに比べてかなり低下した.また,繊維による強化のため母材に比して耐摩耗性は向上した.一方,中空シリカ粒強化材では,湿潤空気中,低荷重下でアルミナ繊維強化材と同じように耐摩耗性が良好であった.マシン油中において荷重を変数とした場合,摩擦係数は低荷重下で非常に低く,荷重とともに上昇し,高荷重下ではほぼ一定となり,AC8A材,アルミナ繊維材,シリカ粒材の間で摩擦係数の値に差はあまりなかった.高荷重下でシリカ粒の破壊によって耐摩耗性は母材より低下し,摩耗係数は母材と同じ程度になった.従ってシリカ粒材は低荷重下で摺動材料として有効となろう. ピン(複合材料)対ディスク(ステンレス鋼)の接触形式による一方向摩耗試験では,シビヤ-マイルド摩耗のせん移挙動に注目しながら,湿潤空気中において摩耗率と荷重の関係を求めた.アルミナ短繊維強化材の耐摩耗性は低荷重下では母材のAC8Aに較べて改善されたが,高荷重下では母材とほぼ同じ摩耗率を示した.一方,中空シリカ粒材では非常に顕著なシビヤ-マイルド摩耗のせん移が生じ,せん移荷重以下ではその耐摩耗性は良好であったが,せん移荷重以上ではシリカ粒の破壊が激しく,摩耗率は母材よりもはるかに高くなった.
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