本研究は、流れの不安定性に基づく非線形な挙動の解明を目的として、正及び負の時間加速度がはく離を伴う内部流れに及ぼす影響を、主に実験的に検討しようとするものである。具体的には、径が3倍に広がる急拡大円管路内に、周期が3〜10秒の範囲で上流管内の流速が1.7〜2.3m/sに変化する正弦波変動流を流し、拡大部の軸方向圧力分布の時間変化を調べた。 その結果、急拡大直前の細管内圧力を基準とした圧力は定常値に較べ、時間によって値が大きく変化することが分かった。この値は、加速度のみでなくそれ以前の履歴にも大きく影響をうけるようである。周期が短くなり、加速度変化が大きい場合にはこの傾向がさらに大きくなり、また再付着点近傍で特異な分布を示すようになる。これらは、拡大管内の内部流れが時間とともに変化し、再付着点位置が大幅に移動すること、およびはく離損失が加速度により大きな影響を受けるためと思われる。 さらに、定常状態における拡大部の速度分布をレーザードップラー流速計を用いて測定した。前方散乱光をプローブの受光部に戻すためのコーナーキューブを用いる事によって、従来透過率が悪いために精度の悪かった流路中央部まで精度の良い測定ができるようになり、再付着点位置も明らかになった。しかし、非定常流の測定は有効信号の頻度が少ない等の問題で精度が出なかった。 また、NS方程式をスタッガード格子を用いたHSMAC法で解き、直管およびディフューザ内の正弦波変動流を解いている。この結果から、直管では減速時のある期間にほぼ流路全域で壁面極近傍に逆流が生じた。また、ディフューザでは、加速、減速する毎に、はく離点がそれぞれ上流、下流へと移動するとともに、はく離域は縮小、拡大した。
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