研究概要 |
ダリウス形横流水車による超低落差水力の有効利用を考えたとき,その実用化には水車効率の可及的向上と付加的流れ損失の低滅化を図る必要がある。本研究では,ランナを囲むケーシング形状と吸出し管に焦点を絞り実験と理論の両面から調査し,ケーシング形状の最適化によって,水車効率の約5%の向上と発電システムとして望ましい最高効率点の高速度比側への移行を確認した。その具体的成果をその経緯に従って示すとつぎのとおりである。1.ランナ入口におけるダクト軸対称絞りの設置:流路断面積絞り比を1.08〜0.70に変えた実験から,絞り比の増加とともに発生トルクと落差がともに増え,最高効率点速度比も高速側へ移行すること,および最高効率は絞り比0.80のときに得られ,ダリウス翼が上流側を横切る際の動的失速遅れが有効に作用していることが知られた。2.ランナ出口における絞りの設置:平行壁の場合,ダリウス翼が下流側を横切る際の発生トルクが小さく,ランナ下流では大きな偏流を伴う。そこで絞り比を1.08〜0.90と変えてその改善を試みたが,平行壁と大差ない結果であった。3.吸出し管部の二次元ダクト広がり角の影響:低落差有効利用には付加的流動損失と廃棄損失の低滅が不可決である。そこで通常より大きな広がり角10゚を持つダクトを用いその流れ分布を詳細計測したところ,はく離を起こすことなく圧力回復していることがわかった。4.ランナ入口におけるダクト軸対称の絞り設置:絞り比を0.80に保ち,絞りの軸をダクト軸から翼が下流に向かう側にずらした非対称絞りにおいて,ランナ効率の向上と良効率を示す速度比範囲の拡大を認められた。5.任意流路形状におけるダリウス形ランナ周りの流れ場計算:計算スキームを開発し,現在ランナ1回転中の瞬時性能実測値との検証を行っている。今後はこの比較考察を更に進め,吸出し管を含むケーシング形状の最適設計への指針を確立する予定である。
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