研究概要 |
従来の電磁熱流体の磁場解析において,磁場のソレノイダル性を満足させることは非常に困難であった。それゆえ,従来の解析スキームは磁気ベクトルポテンシャルとスカラポテンシヤルを用いた手法が主流であった。 そこで,申請者は,磁場の誘導方程式に流体磁気クロスヘリシティを導入し磁場のソレノイダル性を十分に満足する解方を提案した。さらに,静止導体にも適用可能とするために,速度を含まない数値残差項を式中に残して,回転零の場を導出してスキームの汎用性を拡張した。前者をクロスヘリシティ法,後者を数値残差法と呼ぶことにする。上記の手法はともに磁束密度を直接未知変数とする原始変数法であり,(1)境界条件の設定が物理条件に対して直接的となり,(2)2次元,3次元の区別なく適用できるという長所を有する。 一方,現象論的には,運動エネルギーと流体磁気クロスヘリシティの経時変化より,低Prandtl数流体は,磁場の印加によって周期流から定常流に遷移することを確認した。さらに,流体磁気クロスヘリシティの経時変化より弱磁場ほど速度場と磁場の結合が強いことがわかった。 つぎに,スキームの実用化技術について述べる。流れの数値解析での最大課題は、高Reynolds数における乱流をいかに精度よく予測するかにある。このために差分法,有限体積法,有限要素法の分野でそれぞれ高精度化の技術が発達している。特に,有限要素法の分野でこの上流化技術が他の分野に比較して遅れている。 研究の目的はSIMPLE法を有限要素法に拡張することにある。その結果,双対空間を用いることにより補間関数の高精度化と重み関数の上流化が同時に達成できることがわかった。また,双対空間上で定義された離散化ナブラ演算子と随伴離散化ナブラ演算子を導入することにより,有限要素法における拡散行列を排除し,有限要素法の低容量化と高速化を実現した。
|