失速フラッタと旋回失速はともに翼の失速が原因となって発生する現象であり、両者は共通の方法によって統一的に取り扱うことができる筈のものである。 本研究は数値シミュレーションによって、失速フラッタと旋回失速を共通の基盤の上にたって理解できるようにすることを目的としたものである。 本年度は、まず申請者らが従来行って来た渦モデルによる静止翼列に対する旋回失速の数値解析法を振動翼列の場合にまで拡張することを行った。次いで、この数値解析法を圧縮機翼列の代表として選んだNACA65(12)10翼型より成る食違角30°、弦節比1.0の翼列に適用して、振動翼列における非定常失速流れについての一連の計算を行った。なお、上記の翼列についてはその旋回失速特性は既に明らかにされている。 翼が振動している場合の計算は、翼が平均そり線上中央点のまわりに微少振幅の角振動を行う場合を想定して、その無次元振動数と翼間振動位相差を種々に変化させて行った。そのような翼列においても、翼列に対する平均流入角が大きければ、旋回失速の伝播は発生する。そしてもし、翼振動の位相伝播速度が旋回失速の伝播速度に等しければ両者は同期し、非常に周期性のよい旋回失速が発生すると同時に振動翼は強く励振される。すなわち、失速フラッタが発生する。このような状態は翼振動の無次元振動数が比較的小さく、翼間振動位相差(背側翼位相進みを正とし、0°〜360°間の数字で表すものとして)が大きいときにとくに顕著である。これに対して、翼間位相差が小さく、無次元振動数が大きい場合の同期の現象は、翼振動の位相速度が旋回失速の伝播とは逆向きになるので、非常に複雑である。同期の状態から大きく離れた所では、旋回失速は翼振動のために僅かの影響は受けるもののほとんど無関係に伝播し、フラッタ励振は起こらない。
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