大動脈は分岐を含む複雑な曲がり流路で、その血液流れは高調波成分を有したスタート、ストップを繰り返す周期的流れである。この大動脈においては湾曲部において動脈硬化をはじめとする循環障害が発生し易い。その解明は社会的にも最重要課題となっており、大動脈内血液流れに対する流体力学的アプローチが強く求められている。そこで本研究では、大動脈弓をモデル化した管内において生理学的流量波形で変動する脈動流れを取り上げてその流動特性を明らかにし、これを生体医工学や生理学の分野に広く供することを目的としている。 本年度は、前年度(正弦状の振動流れが曲がり部に流入した場合)に続いて、正弦状脈動流れが流入する曲がり入口付近(助走流れ)について可視化およびレーザドップラー流速計による速度測定を行った。これらの結果から、曲がり入口付近における脈動流れの速度分布について、次のような基礎的知見を得た。 1.速度分布は曲がりの転向角Ω=15〜35°付近で大きく変化し、管軸に沿う流れの発達過程は中程度のウォマスリィ数(α=10)の流れが最も複雑である。 2.最小流量時の逆流は、曲がり部流入後(Ω≧15°)内側断面で生じる。また速度分布のくぼみ現象は、加速中期中α数のΩ=90°下流の曲がり部で出現する。 3.脈動流の助走長さは中心α数の流れが最も長いが、断面平均流速の最大値を有する定常流のそれより短い。
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