向きを自由に変えられる伝熱面(15mmφ)の前面にガラス板を一定距離離して置き、形成される合体泡の挙動を制御することで、核沸騰の高熱流束域から遷移沸騰域にかけて液膜厚さの測定と、その形成と蒸発過程を高速ビデオで撮影した。また、水平と約15°傾いた下向き伝熱面を用いて同様の測定と観察を行なった。液膜厚さは限界熱流束域から遷移沸騰域にかけては、本研究において提案した相関式により液膜厚さは良く整理される。限界熱流束以下では液膜厚さは熱流束に強く依存し、前述の相関式には合わない。液膜形成は気泡の接合によるが、一次気泡の接合か、一次気泡が数個接合した合体泡によるかは、熱流束(伝熱面温度)によって異なり、熱流束が大きければ一次気泡、小さければ合体泡による傾向がある。また、低熱流束では早く発生した一次気泡が中心になり周囲の気泡を吸収しつつ生長して、どの時点で液膜が形成されるか観察できないため、液膜形成のモデルを構成することが難しい。 形成された液膜の蒸発では、低熱流束ほど液膜中での核沸騰の時間が長く、熱流束が大きくなるほど核沸騰の期間は短く、短い熱伝導により液膜が単時間に乾く。したがって、熱流束による蒸発機構には本質的な差はなく、核沸騰と熱伝導による蒸発の相対的時間の長さが異なる違いである。
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