海上に流出した原油を迅速に除去する方法の一つとして焼却法が考えられているが、これを実用する際にはボイルオーバーが問題となる。本研究では、ボイルオーバー抑制に関し、微細空気泡を液層内に吹き込み、これのもつ層内攪拌ならびに水層への伝熱量低減の効果を利用する方法を提案し、この方法の有効性を確認するための実験を行った。まず、耐熱ガラス製のカップ形バ-ナを用いて、燃料の種類(正ヘプタン、エチルベンゼンおよび正ドデシルベンゼンの三種)、燃料および水の初期液層厚さ、カップ径などによるボイルオーバー特性(ボイルオーバー開始時間、燃焼終了時間、燃焼速度など)への影響を調べた。ついで、得られた結果を基に、液層内に微細空気泡を送り込むためのバ-ナを設計・製作し、これを用いて空気供給時における液層内温度分布の径時変化および上記特性を測定し、ボイルオーバーに対する抑制効果を検討した。主なる結果は以下の通りである。 1.ボイルオーバーは、水に比較して沸点の高いドデシルベンゼン(331℃)でのみ発生し、これの低いヘプタン(98℃)およびエチルベンゼン(136℃)では起こらない。 2.ドデシルベンゼンのボイルオーバーについて (1)初期燃料層厚さおよび水層厚さが厚くなると発生時間は長くなるが、後者では徐々に飽和する。 (2)カップ径が大きくなると発生時間は短くなるが、カップ径>60mmでは飽和する。 (3)微細空気泡を適度に吹き込むと発生を抑制することができる。このとき燃料は穏やかではあるがほぼ完全に燃焼し、ボイルオーバー発生時にみられるような多量の燃料の燃え残りはない。ただし、予混合化による排煙量抑制についての効果は認められなかった。また、吹き込み量が過大になると途中で消炎することもある。
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