研究概要 |
噴霧基部の円錐液膜の存在を考慮したホローコーン噴霧の数値解析を行い,瞬間写真撮影や滴径-滴速度同時測定の実験結果と比較検討することにより,ホローコーン噴霧の分裂点近傍の状況やその後の液滴の分散の進行に関して,以下の知見が得られた. (1)渦巻噴射弁を定格噴射圧程度で使用した場合,基部円錐液膜は肉眼観察では直進するように見えるが,瞬間写真から求めた液膜の平均形状は,噴口から離れるにしたがって広がり角が狭まり,液膜が分裂する高さにおける平均液膜形状の進行方向は肉眼観察による液膜の進行方向よりも,かなり内側を向いている.(2)分裂時の液膜の進行方向と液滴の初速度の向きとは密接に関連しており,液膜形状が液滴の初期条件を決めるために重要である.(3)液膜の存在を考慮した数値解析では,液膜の流れによって誘起された空気流は,液膜の内側には循環流領域を形成し,液膜の外側に誘起された空気流は,液膜先端を少し過ぎたところで,液滴の進路を内向きに横切って,循環流領域の背後へ廻りこむ.(4)上述の液滴の進路を横切って内向きに流れる空気流が,小さな液滴が選択的に中心部へ運び,実験で観察される滴径による分別の進行に大きな役割をはたしている.そのため,液膜の存在を考慮した数値解析を行うことで,液膜近傍の空気流の状況や,滴径による分別の進行を適正に予測できるようになる.(5)すべての液滴の初速度は,大きさ,方向とも一定であるという簡単な噴霧入力条件では,滴径と滴速度のばらつきの大きさの関係や,通過頻度空間分布などに関して妥当な予測結果を得られない.(6)本報で対象とした噴霧条件では,基部液膜の平均形状は,ほとんど表面張力によって決定されており,液膜内外の圧力差の効果は少ない.
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