研究概要 |
YAGパルスレーザを光源としたレーザシート法および透過光による写真撮影を行いホローコーン噴霧基部の液膜の分裂状況を観察するとともに,従来ほとんど測定が行われていない噴霧基部の領域で分裂直後の液滴の挙動を位相ドップラー法で調べた.さらに,噴霧基部の円錐液膜の存在を考慮したホローコーン噴霧の数値解析を行い,実験と比較検討し,次の結論を得た. (1)渦巻噴射弁基部の円錐状液膜は,瞬間写真によると,液膜の平均形状は,噴口から離れるにしたがって広がり角が狭まり,液膜が分裂する高さにおける平均液膜形状の進行方向は肉眼観察による液膜の進行方向よりも,かなり内側を向いている.この形状は表面張力で関係づけられる.分裂時の液膜の進行方向と液滴の初速度の向きとは密接に関連しており,液膜形状が液滴の初期条件を決めるために重要である. (2)液膜の分裂点は液膜の進行方向に大幅に変動し,噴孔から分裂点までの距離は最大2倍程度変化する.液滴の初速度は,大きさ,方向ともばらつきが大きい.小さな液滴の中には,より大きな液滴の初速度の方向がばらついている範囲よりもさらに内向きにその初速度の方向をばらつかせて飛び出すものがある.すなわち,液滴の初速度の方向のばらつき具合は滴径に関係なく同じであるとは見なせない. (3)液膜の存在を考慮した数値解析では,液膜の流れによって誘起された空気流は,液膜の内側には循環流領域を形成し,液膜の外側に誘起された空気流は,液滴の進路を内向きに横切って,循環流領域の背後へ廻りこむ.このため,小さな液滴が選択的に中心部へ運び,実験で観察される滴径による分別の進行の大きな役割をはたしている.液膜の存在ならびに液滴初期速度の方向と大きさのばらつきを考慮した数値解析を行うことによって実際の噴霧の予測が可能となる.
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