研究概要 |
高温高圧場の非定常噴霧における初期の混合気形成機構の解明を目的とし、噴射初期の燃料液体の分裂,微粒化および周囲気体との混合などの物理的現象の解明に重点を置いた研究を行った.研究対象は高圧雰囲気中へ100m/s以上の高速で噴出する規模の小さな(全長40mm以下)液体噴霧であり,静止画像の撮影と画像分析を手法として用いた.そのために,持続時間が30nsec以下のごく短いパルス光を発生するナノ秒スパーク光源と総合分解能10μm以下の拡大瞬間撮影系を製作し,液滴画像解析法と組み合わせて,噴霧局所における燃料の分裂と微粒化の状況を分析した.前年度はこのシステムの基本的な性能確認と,特に噴射開始間もない(〜100μs)噴霧の画像観察による検討を行った.その結果を元に,今年度は特に混合気中で燃料が早期にガス化する機構の解明に重点を置いて研究を行った.その成果は以下の通りである. (1)液滴径と形状の同時計測に加え,焦点外液滴像の除去機能を付加した液滴画像解析プログラムを開発した.これによりシート光撮影と同等の効果が得られ,縦断面内局所の液滴特性値の分布から分裂場所の特定が可能になった. (2)噴射開始から約200μsを境として,分裂,微粒化の規模が急激に増大する.この時分裂場所は噴霧先端の狭い範囲から噴霧側面各所に発生する枝状の燃料流に移る. (3)噴射開始から100μsに満たないごく初期の噴霧にも,すでに多数の液滴が見られる.これらの液滴は噴口から5mm程度離れた噴霧側方に停滞しており,20μm以下のごく小さなものが多い. (4)高温酸化雰囲気中での噴霧発達状況や,着火前の混合気組成を急速圧縮装置で調べ,前項までの結果と合わせて検討した結果,(3)で検出した噴口近傍の微細液滴が初期の混合気を形成し,この混合気中での小規模な酸化による温度上昇が燃料のガス化を促進して着火に至るという機構を提案できた.
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