研究課題/領域番号 |
05650205
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
谷下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部・機械工学科, 教授 (10101776)
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研究分担者 |
小林 弘祐 北里大学, 医学部, 専任講師 (70153632)
山田 寛幸 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90182550)
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キーワード | バイオメカニクス / 動脈内流れ / 曲がり管内拍動流 / 内皮細胞 / 酸素輸送 |
研究概要 |
動脈硬化をはじめとする血管病変は、太い動脈において特定な部位に生ずるため、血液流との関連が指摘され、とくに血液と直接接触する動脈内皮細胞の物質透過性が壁面せん断応力によって影響を受ける事実が最近知られて来た。とくに動脈硬化症と血管壁の低酸素状態との関連が以前から指摘され、血流と血管壁との間の酸素輸送が、初期病変発生において重要な役割を演じていると考えられている。そこで本研究では、内皮細胞及び血管壁内の酸素輸送機能が、血流によってどのような影響を受けるかを調べるため、数値計算による血管壁における酸素輸送の解析、培養内皮細胞における酸素透過率の測定、微小酸素電極を用いて実際の動脈壁の酸素濃度測定を行い、血管壁内の酸素輸送に関するバイオメカニクス的性質及び血管病変発生に関する病態生理的性質を明らかにする事を目的とする。 数値計算に関しては、病変が多発する部位である大動脈弓の血管壁の酸素輸送に着目し、酸素濃度分布を見積もった。その結果、曲がり管である大動脈弓の曲がりの内側の血管壁内の酸素濃度が最小となることが解った。この結果は曲がりの内側で病変が多発するという従来の臨床医学的知見と一致しており、低酸素状態と病変発生との相関を示すものとして注目される結果である。さらに培養内皮細胞の酸素透過の測定では、酸素透過率は壁面のせん断応力に依存しないが,エネルギ代謝を司るミトコンドリアの分布状態が流れの負荷によって変化するという極めて興味深い知見が得られた。微小酸素電極に関しては、先端がミクロンオーダーの電極の開発に成功し、ラットの細動脈内の酸素濃度の測定を行い、血管内外の酸素輸送量の見積を行った。以上本年度では、数値計算及び実験的にこれまでに報告されなかった様々な知見が得られ、動脈のバイオメカニクスの発展に貢献すると思われる。
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