研究概要 |
一般に,高熱流束域の核沸騰では蒸気塊の底部と伝熱面との間にマクロ液膜が存在することが知られている.これまで塩類水溶液の核沸騰では,液膜の消耗による不揮発性成分の濃縮がこの液膜内で起こり,伝熱抵抗の増加や腐食の促進が懸念されている.また,局所的に液膜が乾くドライアウトの発生により,核沸騰熱伝達に限界が生じることが観測されている.このため液膜の生成条件とその内部における濃縮過程を明らかにすることは不揮発性成分を含む二成分系溶液の沸騰熱伝達を系統的に予測するうえで重要である.そこで本研究は,リチウム系塩類水溶液を対象として,大気圧,飽和状態でのプール沸騰実験をおこない,高熱流束域における伝熱面上の気泡の挙動を測定し,気泡の状態から液膜形成の詳細な機構を実験的・理論的に明らかにし次の結果を得た. ・高熱流束域(合体気泡領域)における蒸気塊の切断周期は熱流束の1/5乗に比例する.この関係は各種のリチウム塩系水溶液でも認められた. ・伝熱面から発生する一次気泡の径と気泡通過頻度の間に一定の関係が存在することを明らかにした.また気泡通過頻度と一次気泡径の積で表される特性値は蒸気換算速度に一致している.すなわち高熱流束域では,熱量が気泡の成長する潜熱として消耗されることを示唆している. ・気泡の縦方向の干渉割合を定義し,水溶液は水の特性に比べて干渉しにくいことを明らかにした. ・伝熱面上のボイド率から気泡付着面積を算出し,この結果から伝熱面の乾き割合が大きくなるために極大熱流速が低くなることを明らかにした.
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