分散型火炎を形成するためには極めて強い乱れが必要であり、分散型火炎の排気特性に関する情報はほとんど得られていないのが現状である。しかし、本研究者らは対向噴流バ-ナを開発し、比較的容易に実験室レベルで分散型火炎を形成することに成功した。このバ-ナは高速の未燃混合気を衝突させ、噴流の向きが直角に変化するときに生じる強い剪断流によって、非等方な強い乱れを発生させ、この乱れによって分散型火炎を形成するものである。従来の対向噴流バ-ナは水冷されており、特にNOxのような温度に敏感な成分の生成機構を議論する上では不適当であった。そこで本研究ではバ-ナをセラミックスで製作し、水冷を行わないことで熱損失の極めて少ないバ-ナを実現した。本研究では新たに製作されたバ-ナを用い、バ-ナの基本特性である安定限界、乱れの乱流特性、NOxの排出特性を調べた。また、ガスクロマトグラフを用いた多成分の安定化学種を同時分析するシステムを開発し、分散型火炎の化学的構造を明らかにし、NOxの生成機構を解明した。 分散型火炎では半径方向に伸長を受けた紐状渦により渦ベクトルと直角方向の混合が著しく促進され、濃度場が一次元的となり、局所的な高濃度場が存在しない特徴がある。火炎帯から排出されるガスのNOx濃度は極めて低く、NOxにしめるNO_2の割合が高いことが明らかとなった。またこのNOxは主にprompt NOを発生源としていることが確かめられた。完全な燃焼ガス中で発生するNOxはZcldovich機構によるものが支配的であり、その濃度は量論比で最大となる。またガスクロマトグラフを用いた各種安定成分の分析では、熱分解によって不飽和炭化水素および一酸化炭素が主に火炎帯未燃混合気側で発生するが、燃焼ガス側ではほぼ完全に酸化され、燃焼効率はほぼ100%であることがわかった。
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