研究概要 |
平成5年度においては,実験装置の構成,定常状態での限界熱流束の測定を行い,さらに脈動状態での限界熱流束の測定を行っている。実験装置や計測方法の妥当性の検証を行い,従来,定常状態下で求められた実験式や相関式と遜色無いデータが得られていることを確認した。また脈動実験では,実験範囲が現在のところ限定されてはいるが,以下のような結果が得られている。 1.所定の振幅,周期のもとでテスト部に供給する熱流束を順次増加していくと,ある程度までは流量変動に伴って壁温が周期的に低下するが,徐々に,その変化が認められなくなり,ついで周期的にドライアウトが発生するようになる。熱流束が相対的に低い場合には大きな壁温変動には至らないが,熱流束の増加とともに壁温が鋭く上昇するようになり,ついには完全なドライアウト状態に至る。 2.流量脈動の周期が短い,あるいは振幅が小さい場合には限界熱流束の定常値からの低下は相対的に少ないが,振幅の増加とともに,また周期の増加とともに大きく低下し,本実験の範囲では定常値の40%にまで低下する。今後の展開としては,実験過程において管の熱容量が大きく影響し,またそれによって温度変動挙動が大きく異なることが明かとなった。つまり沸騰二相流の流れの変動の時定数と壁温変動の時定数の大小関係が挙動に影響する。従って,基本的な伝熱流動の動的特性の解析,シミュレーションが不可欠となってきた。本研究の当初の予定では垂直管のみならず水平管についても実験を行う予定であったが,この予定を変更して,垂直管についての実験をさらに追加して行い,限界熱流束のみならず,流動の動的挙動,つまり圧力損失挙動についても測定することとした。これによって動的挙動のシミュレーション結果の検証用のデータを得ることができる。
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