研究概要 |
(1)搬送装置用電磁石のコア及び浮上体の吸引部を塊状(solid)とした場合のセルフセンシング磁気浮上の方法について,理論的な検討を行った.このような磁気浮上系では,コアー中及び吸引部を流れる渦電流の影響が無視できない.渦電流を状態変数として含んだ磁気浮上系は不可制御となるため,従来のセルフセンシング浮上の理論をそのまま適用することはできない.しかし,コイル1巻き当たりの磁束と磁気抵抗の積によって定義される新しい状態変数を導入することによって,可制御な系に変換することができる.したがって,従来と同じ構造のコントローラによって,セルフセンシング磁気浮上が可能となることを示した. (2)珪素鋼(SCM415)をコアおよび吸引部に使用した磁気浮上系の1自由度モデルを試作した. (3)試作した装置において,制御系の設計に必要となるパラメータを測定した.測定の結果,インダクタンスや逆起電力係数は,測定周波数によって,大きく変化することがわかった. (4)測定したパラメータを用いて,制御系を設計し,セルフセンシング磁気浮上を試みた.実験の結果,渦電流の影響を考慮した系では,安定な伝達関数を持つコントローラを選定しようとすると,閉ループ系の極を自由に設定することができないため,磁気浮上を実現することが困難であることがわかった. (5)(4)の結果から,磁気浮上搬送装置にセルフセンシング磁気軸受を利用する場合には,電磁石のコア及び吸引部を積層構造とすべきであるとの知見を得た.
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