本研究では、膝屈曲に伴う靱帯付着部の三次元移動を忠実に再現しうる「膝運動シミュレータ」、および十字靱帯形状を模擬した天然ゴム素材の模擬靱帯を製作した後、膝屈曲に伴う(模擬)靱帯表面全体の歪分布をストレィンゲージで測定するシステムを完成した。また、このシステムを用いた測定実験では、これまでのin-vitro実験に匹敵する結果を得た。 次段階の測定実験では、測定対象に300点のマ-キングを施し、膝屈曲に伴う靱帯の三次元変形形状と歪分布をCCDビデオカメラによるマ-キング計測から算出できる計測システムとソフトウェアプログラムを開発した。このシステムを用いた測定実験では、先のストレィンデ-ジによる結果を補完するとともに、さらに詳しい歪分布特性を求めた。 また、これらの測定実験結果を検証するため、非圧縮性超弾性体の有限変形理論を応用して、模擬靱帯の有限要素解析を実施した。 測定実験ならびに理論解析の結果から、靱帯は線維の走行方向に沿ってでも伸び率は場所ごとに異なること、付着部近傍での伸び率がとくに著しいこと、中央側の伸び率がもっとも小さいこと、などの点を明らかにした。さらには、脛骨前方引き出し試験での靱帯張力変化、靱帯付着部に生ずる力、最大張力発生箇所の特定、相対伸び率最小線緩の検索、等々に関しても測定と解析を行い、臨床的に有用な結果を多数求めた。
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