研究概要 |
これからの実用化が期待されている燃料電池の排熱を熱源とする吸収式冷凍機については,その動特性を十分に解明することが,燃料電池電極冷却系の温度制御という点から重要な課題となっている.本研究は,従来ほとんど研究が行われていない吸収式冷凍機の動特性を,筆者が今までに進めてきた熱交換器の動特性に関する研究成果をベースに,動特性モデルを提案すること,ならびに実験的な検証を行うことを目的としている. 吸収式冷凍機は,蒸発器,吸収器,再生器,凝縮器および溶液熱交換器が接続された一つの熱システムとしてみることができる.そこで,まず個々の要素の動特性モデルを構築し,次にそれらが接続したシステムとして全体の動特性を明らかにする手法を提案し,これをもとに単効用吸収式冷凍機の動特性について具体的な検討を進めた.そこでは,各構成要素の動特性を計算し,おくれが小さい要素についてはその動特性を集中定数モデルで表し,おくれの大きな要素についてはその動特性を厳密な形で考慮することによって単効用吸収式冷凍機の動特性モデルを提案した.さらに,単効用吸収式冷凍機の動特性実験の結果と比較することによって本研究で得られた動特性モデルの妥当性を確認することができた.これによって,単効用吸収式冷凍機の動特性に関する研究は一応完結したものと考える.それに引き続き,2重効用吸収式冷凍機の動特性について研究を展開し,現在シミュレーションによりモデルの検討を進めており,これと同時に実験による検証をも行うべく準備を行っている。
|