自由表面や界面が存在する状態で液体が封入された円筒容器を持つ高速回転軸は、周方向に軸回転方向とは逆方向に伝播する波動が界面上に発生し、軸に激しい自励振動が引起こされる。この自励振動を防止するためには波動の伝播を抑制すれば良く、容器空洞内を半径方向に仕切る方法が最も簡単であろう。事実、1液式の遠心分離機の場合は有効である。最近、ウィルス等の分離で注目されているより密度の大きい液体を同時に封入して液体間の密度勾配層内で分離物を捕捉する、2液式の高速遠心分離機の場合は上記の対策にも拘らず装置の破壊に至る程の激しい自励振動が発生した例が報告されている。 本研究は半径方向に仕切られ、密度の異なる2種類の液体で満たされた円筒容器を有する回転軸の自励振動防止策について調べる。非粘性、非減衰の下に解析を行った結果、このような系では軸回転数が系の危険速度と液体の固有振動数数との和にほぼ等しくなる近傍で自励振動が発生することが分かった。空洞分割数を多くすると、自励振動が発生する軸回転数領域が高回転数側に移行し、液体の固有振動数が軸回転数より高くなると系が安定することが分かった。また、外部減衰の影響を調べる実験を行った結果、かなり弱い外部減衰で系が安定化出来ることが分かった。さらに、空洞分割が多い場合や、高次の波動モードを伴う自励振動はごく弱い外部減衰で安定化されたり、観察されない場合が多いことも確認された。系の外部減衰と液体の粘性を考慮して、基本的な理論解析を行った結果、定性的に実験結果との一致を見た。 境界層理論等を用いてさらに詳しい理論展開を行い、実験結果と比較検討し、理論と実験の定量的な一致をも見るようにする。
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