研究概要 |
溶接は多くの構造物に用いられている接合法である。溶接は局部的に熱を加える加工法であるために,溶接部付近に残留応力が発生する。表面の引張残留応力は部材の疲労強度などに悪影響を与えるために,これまでに熱処理などによる残留応力の低減法が試みられている。一方,溶接後の部材に振動応力を加えることによって残留応力を低減できる可能性があることが指摘されているが,実用段階での成功例はほとんどない。 本研究は,振動を利用した新しい残留応力の低減法として,振動荷重を加えながら溶接を行うことによって残留応力を低減する方法を開発することを目的としている。前年度は実験によってこの方法の有効性を確認した。 本年度は前年度に得られた結果を理論的に求める方法を開発する。すなわち、加振しながら溶接した場合の残留応力の変化を理論的に検討し,本研究の有効性を理論的に検証する。溶接は溶接母材と溶接金属を加熱溶融させて接合する金属結合法である。そのため,金属の凝固過程における収縮によって非常に高い残留応力と変形を生じる場合が多い。一方,凝固直後の金属の降伏点は一般に極めて低いことから,わずかな外力の付加によって塑性変形を生じさせることができると考えられる。このことを考慮して,引張残留応力を想定した基礎的なモデルとして,弾塑性特性をもつばね要素に予引張力を与えた力学モデルを導入した。このモデルを用いて応答解析を行った結果,残留応力に相当する予引張力が降伏力に近いほど,入力振幅が大きいほど残留応力が低減されることが明らかになった。必要に応じて確認のための実験を行い,この力学モデルで実験結果を検証できることが明らかになった。
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