研究概要 |
溶接は多くの構造物に用いられている接合法である。溶接は局部的に熱を加える加工法であるために,溶接部付近に残留応力が発生する。表面の引張残留応力は部材の疲労強度などに悪影響を与えるために,これまでに熱処理などによる残留応力の低減法が試みられている。一方,溶接後の部材に振動応力を加えることによって残留応力を低減できる可能性があることが指摘されているが、実用段階での成功例はほとんどない。 本研究は,振動を利用した新しい残留応力の低減法として,振動荷重を加えながら溶接を行うことによって残留応力を低減する方法を開発することを目的としている。平成5年度は実験によって,平成6年度は理論解析によってこの方法の有効性を確認した。 平成7年度は,これらの結果を総合して実機への適用性を検討し,その成果を学会で発表した。さらに,報告書を作成した。実験結果については実用的な図や表にまとめ,理論解析法については汎用性をもたせるようにまとめた。平成5年度には,簡単なはり状の試験片を小型加振機で加振しながら溶接する実験を行った。その結果,とくにビ-ド部の引張残留応力が低減されることが明らかになった。また,加振振幅が大きいほど残留応力が低減される傾向があることを明らかにした。これらの結果を実用的な図や表にまとめた。さらに平成6年度は,実験で得られた結果を理論的に求める方法を開発した。予引張力または予圧縮力を受けるばねをもつ振動モデルを用いて,加振しながら溶接した場合の残留応力の変化を理論的に検討した。さらに,このモデルで溶接中の試験片の振動特性の変化を考慮できるようにした。その結果,実験結果を理論的に説明することができた。この理論的手法に汎用性をもたせるようにした。
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