リン酸形燃料電池を高出力密度化することを目的とし、高出力密度化に伴う性能不安定現象の原因究明を行い、下記の事象を明かにした。 (1)高出力密度運転での性能不安定現象に及ぼす酸素濃度、ガス流量、運転温度などの運転条件の影響を明かにした。酸素濃度の影響が最も大きく、酸素欠乏による濃度分極の増大が性能低下の原因であることが解明出来た。 科研費で購入したディジタルストーレッジスコープで抵抗分極測定が可能となり、濃度分極の分離評価を行うことが出来た。 (2)製作方法を変えた電極を用いて実験したところ、撥水性の強い電極ほど高出力密度運転で性能低下が起こりやすいこと、強撥水性電極にリン酸を含浸することで性能が安定化すること、リン酸の含浸にはリン酸濃度の影響が大きいことなどが判明した。 以上の研究成果は、まとめて電気学会論文誌に発表した。 当初計画した上記研究の過程で、予期せぬ新たな重要知見が得られた。これは、リン酸の濃度が触媒層のリン酸含浸性に強く影響を及ぼすことである。負荷が変化すると、発電に伴う生成水のためリン酸濃度も変化するので、触媒層中のリン酸含浸量も変化する可能性がある。この点については、平成6年度の研究で取り上げる。
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