リン酸型燃料電池を高出力密度化することを目的とし、高出力密度で起こる性能不安定現象の原因究明を行い、高出力密度で且つ安定した運動を行うための方策を明らかにした。 (1)性能不安定現象は、触媒層へのリン酸浸透が不十分な場合に起こる。撥水性の弱い触媒層では起きないが、撥水性を強めた電極を高出力密度で運転する場合に起きやすく、あらかじめ触媒層にリン酸浸透する対策が必要である。 (2)リン酸浸透を促進する方法として、減圧法、超音波法、アルコール法、電位法、及び濃縮リン酸法を試みた結果、機械的な外力を利用した前の二つの方法は、リン酸浸透にあまり効果がなく、界面張力に関係する後の三つの方法でリン酸浸透を促進する効果がみられた。しかし、アルコール法は、リン酸浸透量が大きい割に電極性能が低く、電位法と濃縮リン酸法は浸透促進に効果があるだけでなく、少ないリン酸浸透量でも高出力密度での安定運転に効果があり実用性が高いことが判明した。 (3)性能不安定現象は、徐々に酸素が不足して特性低下が起こる現象と特性面では同じ特徴を示す。純酸素では、性能不安定現象は起こらず、酸素濃度の低いガスほど低い出力密度でも性能不安定を起こす。安定運転中の電極が、不安定領域までどの程度余裕があるかは、酸素濃度の低いガスを用いて診断できる。 (4)負荷変動や起道・停止過程におけるリン酸濃度変化を模擬した試験を実施した結果、定常運転状態に比べ電極性能の低下が大きいことが判明した。
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