研究概要 |
本研究は,申請者らが考案している磁束オブザーバに基づく誘導電動機のすべり周波数制御形ベクトル制御の実験装置を製作し,理論の検証を行って,従来の方式に比べパラメータ変動に対するロバスト性に優れた定常及び過渡特性を有するシステムを実現することを目的としている。これまでの成果をまとめると以下の様になる。 1.システムの解析:誘動機のd-qモデルを用いて,系の定常解析を行った。また,線形モデルを導出してトルク伝達関数の極と零点の軌跡より系の安定性を明らかにした。更に,実際のディジタル制御系として解析するためシミュレーションプログラムを開発した。 2.実験装置の製作:DSP(TMS320C30)を用いたPWMインバータ制御の実験システムを試作し,ハードウェアの製作とC言語による通信プログラム及びアセンブリ言語による制御プログラムを開発した。 3.理論と実験の比較:考案した磁束オブザーバによる誘導電動機ベクトル制御の特性試験を行った。この結果,提案方式は,従来のすべり周波数制御形ベクトル制御に比べ二次抵抗変化に対するロバスト性が大きく改善されることが検証できた。また,これらの結果は理論解析の結果とも良く一致しており,提案した解析モデルによるシステム設計が可能であることを立証できた。 4.制御電圧源による新方式の考案:新たに同一次元の磁束オブザーバを用いたベクトル制御系を考案した。これにより,パラメータ変動にロバストなシステムが構築できるばかりか速度,一次抵抗及び二次抵抗をオンラインで同定することが可能となった。
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