21世紀の基幹エネルギーの一つとして、自然エネルギーの活用が不可欠として認識され、中でもクリーンなエネルギー源として太陽電池による大規模光発電実現に向けて、高効率、低コストの太陽電池素子の開発が行われている。しかしながらこれまでの光発電に関する研究は、もっぱら素子の高効率化・低コスト化に重点がおかれ、アレイ化・システム化した際の設置条件や運転条件による出力がどのようになるかに関する研究は、南向け緯度角に設置した場合しか得られておらず、特にこれ以外の設置条件での出力に関する知見はほとんど得られていないのが現状であった。本研究は、様々な方向に太陽電池を向けた際の出力特性計測データを基に、設置条件と出力についての相関を求め、太陽光発電システムからの出力予測についての手法を確立し、あわせて太陽光発電システムからの出力と負荷パターンとのマッチングを最大にする設置条件を明らかにすることを目的として実施したものである。本年度では、(1)計測した日射データと太陽位置の理論値より、計測地点での直達日射量、散乱日射量、日照時間のデータベースを作成する、(2)任意傾斜面への日射量計算モデルを用い、(1)のデータを基に、計測した太陽電池方位の日射量理論値を計算し、実測日射量および太陽電池出力との相関を調べる、(3)任意傾斜面日射量の計算結果を基に、異なる傾斜面に設置した太陽電池を並列運転した場合の出力電力量を定量的に調べ、そのようなシステムの有用性を検討する、の3点について検討を行った。 その結果、ある時刻における直達日射量および全天日射量がわかれば、すでに提案されているモデルを散乱日射の大小により使い分けることにより、任意の方位角、傾斜角の斜面に入射する日射量を5%以内の精度で予測できることが分かった。また、東および西向き30°の角度に設置した太陽電池を並列接続して運転した場合、太陽高度の高い夏季には、すべて南向けに設置した場合の出力の出力にほぼ等しい値が得られること、冬季でも70%程度の出力が得られることが分かった。
|