1.継続時間の長い雷鳴から雷放電路を連続再現できるように改善した音響法で、平成5年度のロケット誘雷実験中に獅子吼高原で観測した7例の雷鳴を解析して、冬季雷の放電路特性に関する次の性質を明らかにした。 (1)音源の平均高度は1.5kmから2.4kmに、また50%累積高度は1.4kmから2.5kmの間にある。 (2)水平方向の距離は1.26kmから6.47kmの間にあり、平均4.41kmと雷雲内部を水平方向に伸びている。 2.点音源を線状に配置して重畳するシミュレーションとインパルス放電の実験から、放電によって生じる線音源の性質を明らかにした。 (1)線音源に垂直な方向で観測する音の振幅は、伝搬距離と共に線音源の長さに比例して大きくなるが、垂直方向から40度以上離れると線音源の長さに無関係で振幅の小さな音になる。 (2)線音源に垂直な方向から外れるにしたがって、点音源の重なり合いから波形が歪み波長が長くなる。 3.雲放電と大地放電の雷鳴波形を2の結果をもとに比較して次の点を明らかにした。 (1)雲放電には大地に垂直で、大きな帰還雷撃電流の流れる主放電路がないので、振幅の極端に大きな音響信号が生じない。雑音レベルは共通であるので、最大振幅の現れる信号のSN比から雲放電と大地放電を識別できる。 (2)雷鳴の周波数は伝搬距離と共に音の重畳効果と高い周波数成分の減衰で低下する。従って、卓越周波数から雷放電エネルギーを見積もるには、変形の少ない近距離で観測した雷鳴を使用する必要がある。 4.平成6年度のロッケト誘雷実験の雷鳴を獅子吼高原で、詳細に再現するために高さを変えて設置した4個のマイクロホンで観測した。この雷鳴については今後解析する。
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