今年度は、自己構築機能発現のために吸着LB法において展開分子と吸着分子のドナー性・アクセプター性や展開分子のアルキル鎖長がLB膜作製の成膜性や制御性に及ぼす影響を詳細に検討した。さらに、新規に導入したマルチチャンネル測光システムにおいて、水面上単分子膜の観察や吸着LB膜の観察を行っており、平成6年度に導入予定のY型光ファイバーを用いたその場観察用の基礎データの収集および光ファイバーのエッチング技術の検討を行った。 具体的には、展開分子としてCnTCNQ(n=12、15、18)、吸着分子としてはTMPD、PPD等を用い、紫外-可視吸収スペクトル、FT-IR測定を行い以下の結果を得ている。 C_<15>TCNQへのTMPDの吸着においては、数分から数時間の間で吸着時間を変化して得られたLB膜のTCNQに起因する吸光ピークにシフトが観測された。一方、C_<12>TCNQの場合は最短の吸着時間(5分間)ですでにピークシフトが生じていたが、C_<18>TCNQの場合は、上記の吸着時間の範囲ではピークシフトはまったく観測されなかった。また、TMPDとは置換基が異なるp-フェニレンジアミン(PPD)を吸着分子とした場合には、分子間の電荷移動がTMPDの場合に比較して強く観測された。これはCnTCNQ分子間の相互作用とTCNQと吸着分子間の相互作用強度の相関関係により吸着分子の吸着量、配向性が変化しているためと考えられる。この点に関しては、さらにY型ファイバーを用いたL膜のその場観察による短時間領域のデータ収集、表面圧依存性の点から次年度に詳細に検討する予定である。
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