研究課題/領域番号 |
05650293
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森迫 昭光 信州大学, 工学部, 助教授 (20115380)
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研究分担者 |
栄岩 哲二 信州大学, 地域共同研究センター, 助教授 (60175528)
松本 光功 信州大学, 工学部, 教授 (80020981)
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キーワード | 六方晶フェライト薄膜 / 高密度記録媒体 / 活性化酸素 / プラズマ分光 / 反応性スパッタリング / 酸化物薄膜 / バリウムフェライト |
研究概要 |
高密度垂直磁気記録媒体や高周波薄膜デバイスとして有望な六方晶バリウムフェライト薄膜の、スパッタ法による低温形成法の確立を主目的として研究を行った。具体的には低温形成に効果的な添加元素の決定ならびに放電ガスの反応性促進効果の検討を行った。添加元素としては六方晶フェライトの構成元素の一つである鉛を選んだ。他の候補としてはストロンチウムなども検討したが、安定性の問題があった。ターゲット上の鉛片の個数を変化することにより最適組成すなわち化学量論組成の薄膜を形成することができた。しかしながら、鉛の組成は薄膜形成中の酸素ガス圧ならびに基板温度に極めて敏感であり、低温度そして高い酸素分圧ほど鉛が入りやすいことが明らかになった。これまでの申請者らの研究ではバリウムフェライトの結晶化温度は約620℃程度であったが、この鉛を添加することで550℃に低下することが明らかになった。次に、本研究の主題でもある活性化酸素の効果について検討した。活性化酸素はN2Oガスとアルゴンガスの放電により形成できると考え、特に酸素原子励起種に対応した励起線に注目してプラズマ分光を行った。通常の反応性スパッタでこれまで申請者らが用いていたアルゴンと酸素の混合ガスのみのプラズマでは反応性推進種と考えられる活性化酸素に対応する励起線は観察できなかったが、N2Oガスを混合することにより波長が437nm近傍に活性化酸素に起因すると思われる微弱な励起線が観察されることが明らかになった。このN2Oガスを導入することにより、基板温度が520℃付近でも結晶性に優れたバリウムフェライト薄膜を創製できることが明らかになった。すなわちこれは活性化酸素の酸化物薄膜作成時の基板温度の低減効果と見なすことができる。今後、酸素原子の励起方法も含めて、さらに結晶化温度の低減のための研究を展開する必要がある。
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