研究概要 |
光励起MOCVD法による強誘電体Pb(Zr,Ti)O_3(DZT)薄膜の成長を行い、光エネルギーがその結晶学的及び電気的特性に及ぼす効果を詳しく調べると同時に光エネルギーによる特性制御を行った。 DZT薄膜作製時の酸化ガスとして、従来のO_2のみならずより光吸収波長領域の広いNO_2やO_3を用いた場合の膜特性の比較を行った。酸化ガスとしてO_2を用いた場合、光励起MOCVD法によりPt/SiO_2/Si基板上に550℃及び620℃でペロブスカイト正方晶系及び菱面体晶系DZT薄膜が各々成長した。一方、NO_2を酸化ガスとして用いると正方晶系及び菱面体晶系DZT薄膜は各々535℃及び540℃で成長し、O_2を用いる場合に比べて低温成長化が図られた。また光照射は誘電率やソ-ク電流に影響を及ぼすことがわかった。これは結晶膜成長中の光照射による成膜機構の変化、つまり気相中や基板表面での光化学反応により、薄膜の組成比(Zr/(Zr+Ti))が影響を受け変化するからである。このことは、光照射つまり光エネルギーにより細かい膜組成の制御が、ひいては電気的特性の制御が可能であることを意味している。 酸化ガスとしてO_2+O_3を用いると、PZT薄膜の電流一電圧特性、とりわけソ-ク特性や絶縁破壊電圧の改善がみられ、成膜中の光照射によりその改善はより顕著になった。光励起MOCVD法により得られたPZT薄膜は、優れた表面モフォロジーや膜の機密性を示していることより、O_3の使用及び光照射は膜のミクロな構造の改善や膜中の欠陥の減少に関与しているものと思われる。 以上のいくつかの実験事実より、強誘電体薄膜においても従来半導体薄膜結晶成長において知られていたような光エネルギーによる特性制御が可能であることが本研究により初めて示された。
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