a‐Siにおいては不純物ド-ピングにより、キャリア(ドリフト)移動度が低下することが報告されており、これは、ランダムに配置した荷電不純物と構造欠陥により誘起される長距離の静電ポテンシャルゆらぎが原因であるとの解釈が行われている。本研究では、偏光EA法とホール起電力法とを組み合わせて、電子および正孔のバンド移動度を分離して見積ると共に、これまで仮定されていた平均双極子遷移行列要素R^2もあわせて決定し、上述の解釈の是非を検討した。PH_3を用いてn型にドープした一連のa‐Siにおいて、ホール起電力測定から電子のホール移動度を求め、これからホール効果理論を通して、電子の平均自由工程を決定する。これによって、電子と正孔のバンド移動度が分離して求められることとなる。実験結果により、ド-ピングベルを高めるとともに、電子移動度が顕著に低下しており、一方正孔移動度はほぼ一定であることが分かった。ここで、電子の移動度がド-ピングにより減少するという結果は、他の電気的測定からの結論と一致している。ただし、この低下は微視的な構造乱れに誘起されたバンド移動度そのものの減少に起因したもので、静電ポテンシャルゆらぎのような巨視的理由によるものではないことが明らかとなった。ここで言う微視的構造乱れの増加は、おそらく、電気的に活性でない3配位不純物(電気的活性度は1/10以下である)の混入にその主要原因があるものと想像される。以上、本研究により、デバイス級a‐Si系材料の開発に向けた新評価法が確立され、また、合金化、不純物ド-ピングおよび熱処理などによる構造乱れの変化をキャリア移動度の変化として明確に捕らえることができた。
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