研究概要 |
昨年度の研究で、スッパタリング法では窒素分圧の可変範囲が狭いためSm_2Fe_<17>を十分に窒化させることができず,レーザディポジッション法を取り入れる必要があることが明らかとなっていた.そこで本年度は,窒化ガスの種類,基板温度,ディポジッション後の熱処理条件等を変化させてSm-Fe-N薄膜を作製し,その磁気特性を調べた.その結果は以下のように要約される. 1.ディポジッション中の雰囲気ガスを,窒素からNH_3+H_2ガスに置き換えて昨年と同様な実験を行ったが,窒素ガス中でのディポジッションで得られた結果と大きな差異は観測されず,Sm_2Fe_<17>N_3を得ることはできなかった. 2.基板温度を,室温-400℃まで変化させて膜を作製したところ,200℃を越える温度では,膜中に取り込まれる窒素の量が室温より減少した.また,室温に比べて高温では,膜の酸化を防止するのが困難であった.これらの理由から,基板温度をあげて作製した膜では,本研究の実験条件の範囲では,良好な結果は得られなかった. 3.真空中あるいは20mTorr程度のNH_3+H_2ガス中で作製された膜を500℃以下の温度で熱処理後,窒化処理を施すとSm_2Fe_<17>N_3相が得られる.しかしながら,熱処理の過程で多量のα-Feが析出するため,その保磁力は低い. 以上のように,本研究の範囲では,高性能Sm-Fe-N薄膜磁石を作製するには至らなかった.今後はSm_2Fe_<17>N_3合金と同等な磁気特性を有し,熱的にも安定ではあるが,通常のプロセスでは作製に困難の多いSm-Fe-C系の材料の直接製造を目指す予定である.
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