研究概要 |
平成5年度の研究実績は,初年度の第一段階として高圧CVケーブルの絶縁診断に携わっている技術者や専門家から詳細なヒアリングを実施して劣化診断に関わるルールを獲得し,エキスパートシステムの知識ベースを確立した。すなわち,各種の絶縁診断試験法による絶縁特性値(絶縁抵抗値,高圧直流漏れ電流値,tan deltaなど)から得られる測定値に対する劣化の判定基準値を決定し,ファジィ推論を実行するためのメンバーシップ関数を構成した。また,ケーブル保守現場の技術者から目視点検によって劣化診断を実施するための診断知識と劣化判定の手法についても抽出した。これらの研究成果については「高圧CVケーブルの絶縁劣化診断評価に関する考察」と題して東海大学工学部紀要に報告した。 次に,本研究の第二段階としては,第一段階における研究成果に基づいて,プロトタイプの絶縁診断エキスパートシステムをパーソナルコンピュータのMS-DOS上でOPS83とC言語を用いて構築した。現在,完成したプロトタイプシステムについては,現場技術者や専門家から再度のヒアリングを実施して診断ルールの調整とメンパーシップ関数のチューニングを行い,システムの完成度を高めることと,現場で使用可能な実用性のあるシステムを目指して研究を進めている。これまでの研究成果をまとめて東海大学工学部紀要に「CVケーブルの絶縁診断支援エキスパートシステム」の論文を発表した。次年度は,本システムの実用化を図っていくとともに,ケーブルの停電時の絶縁特性値によるエキスパートシステムばかりでなく,活線絶縁診断システムも開発予定であり,それらを取りまとめて電気学会論文誌に発表する計画である。
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