炭化水素系の原料を用いたダイヤモンド膜の合成において、メチルラジカルと原子状水素が重要な役割をする、すなわち、メチルラジカルはダイヤモンドの成長に、また原子状水素は非ダイヤモンド成分の除去に寄与しているものと考えられている。従って、良質のダイヤモンド膜を効率よく合成するためには、これらの反応活性種を選択的に基板上に供給することが望ましい。 本研究では、メチルラジカル等の中性活性種と原子状水素を選択的に供給してダイヤモンドの合成を行うというアイデアを2つの方法で試みた。 第1の方法は、エキシマレーザアブレーション法とマイクロ波励起による水素プラズマを組み合わせたもので、固体(グラファイト)ターゲットを出発原料とした炭化水素ラジカル生成に特徴をもたせた。この方法により、非常に滑らかな表面のDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を得ることができたが、レーザアブレーションの堆積速度の大きさに原子状水素の供給が追い付かず、更に最適化を行っている。 第2の方法は、原料ガスとしてメタノールと水素を用い、RFマグネトロン放電により主にメタノールを、またマイクロ波放電により主に水素を励起し、メチルラジカルの炭化水素ラジカルと原子状水素とを共に効率よく供給することができる装置(選択ラジカル供給プラズマCVD法)を考案し、更に連続発振炭酸ガスレーザによる基板加熱を組み合わせて、ダイヤモンドの合成を行った。本装置は、メタノールの分解と原子状水素の供給を別々に制御することができ、ダイヤモンドの新しい合成法として有効であることが分かった。
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