これまでに酸化物超伝導系(焼結体)として、【.encircled1.】急冷法を用いて酸素欠陥量を制御したY‐Ba‐Cu‐O系(以下Y系と略す)、【.encircled2.】銀・亜鉛・プラセオジウムドープのY系、【.encircled3.】亜鉛ドープのBi‐Sr‐Ca‐Cu‐O系(Bi系)の3つのタイプの試料を対象として揺らぎ伝導率の測定とデータ解析が進められた。その結果以下の様な成果が得られている。1)系【.encircled1.】とプラセオジウムを含むY系では揺らぎ効果は増大することから、これらの系でのTcの減少はCu‐O結合に生じる不規則性によるものと解釈される。2)それ以外の試料では揺らぎ効果は減少する。銀を含む場合は、この系特有の銀によるパーコレーション的伝導のため揺らぎが観測され難くなるためと考えられる。特に興味ある結果は、非磁性不純物である亜鉛がY系とBi系に対し共にニッケル不純物で見られるような磁性的振舞い(揺らぎの振幅がドープ量と共に減少する)を有することである。3)Y系の場合、不純物を含んでも伝導は3次元的であるが、Bi系ではドープ量と共に低次元伝導を示すようになる。この結果は、後者では伝導の低次元性が強いため、不純物添加によりフラクタルな性質が現れ易いためと考えられる。 以上の成果から本研究の特色である「揺らぎ伝導率解析による特性評価」の手法が、不純物を含む酸化物超伝導体に対して有効であると実証された。本研究では、磁気的効果が著しい不純物の場合(例えば、亜鉛を含む系)揺らぎ伝導が著しく抑制されるので解析の際に誤差が大きくなることが問題となった。従って今後の研究の進め方としては、この点の解決するため、上記の成果1)を利用して酸素量を制御した不純物ドープの試料を用いることにより揺らぎ効果を増大させて解析することが有効であると考えられる。このことと薄膜試料に対する同様な評価が次年度への課題となっている。
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