研究概要 |
本研究では,量子効果現象を利用する半導体超格子に対する複素等価回路を用いて,電気回路的に新物質設計を論ずるものであり,平成5年度の研究では, (1)共鳴状態の存在寿命は,従来は共鳴準位の半値幅で求めていたものを,ラプラス変数の複素エネルギーから求めることを提案し,従来問題があるとされていた共鳴準位の特性が双峰性を示すものや,従来では求めることが不可能であった三重以上のバリヤ構造をもつ多重井戸構造の存在寿命も,容易に求められることを示した. (2)理論的には完全に共鳴トンネルの状態にある場合でも,実際に観測される電流ピークは理論値よりも一般に小さくなっている.この説明を従来経路積分の有限回での打ち切りで行っているが,本研究では複素等価回路中の多重反射の打ち切りで説明できることを示し,打ち切りとピーク値との関係を極めて容易に示している. (3)クローニッヒ・ペニー模型の成り立たない物質では,その主たる原因はヘテロ界面での波動関数の接続にあることが知られている.これを表す界面行列の複素等価回路を求め,Г-XミクシングやタイプIIあるいはIII型量子井戸の解析を極めて容易に行えることを示した. (4)多重バリヤ構造は一般に複数の共鳴準位を有し,デバイス設計なは不要な共鳴準位が生じる.本研究ではスミスチャートを利用して,不要な共鳴準位の透過確率を約0.1に減衰させることのできる設計法を提案している.
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