研究概要 |
本研究では、量子効果現象を利用する半導体超格子に対する複素等価回路を用いて,電気回路的に新物質設計を論ずるものであり,次の研究を平成6年度に行った. (1)量子井戸や周期的ポテンシャルを利用したデバイス実現のためには、その固有エネルギー準位やミニバンド、波動関数を知り、最適なポテンシャル構造を用いることが望まれる。本研究では、より一般的な境界条件を表せる境界行列の等価回路表現を用いて,GaAs/Al_xGa_<1-x>As,InAs/GaSbを用いた量子井戸の固有エネルギー準位、周期的ポテンシャルによるミニバンド構造などを求めた. (2)多重バリヤ構造は一般に複数の共鳴準位を有し、デバイス設計には不要な共鳴準位が生じる.本研究ではスミスチャートを利用して,不要な第二共鳴準位の透過率を約0.1に減衰させることのできる非対称3重バリヤ構造を提案し,唯一つの完全共鳴準位を実現している. (3)電子波導波路を複数のモードが伝搬する導波路部分とそれらを接続する接合回路ととらえ,電子波の反射,透過について回路行列や回路関数を利用して解析を行った.さらに,二次元の電子波導波路中の反射,透過の特性を近似一次元で表現する試みを行い,その近似精度を求めている. (4)量子力学の研究では,トンネル効果と摩擦との関係が問題となっている.摩擦を波動方程式に表すと損失のある線路に対応する.損失のある線路には,S(散乱)行列の解析が行えない.本研究では,波動方程式を電信方程式に置き換え、変数を電圧と電流の二つにして表現するので,電圧および電流のS行列を求めることができ,それらのS行列による解析を可能にしている.
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