昨年度までの研究により、素子の試作条件についてほぼ決定したが、今年度は、素子チップを小さく切り出すために基板をラッピングと化学エッチングにより薄くする工程を追加した。この工程による基板結晶へのダメ-ジも懸念されたが、導入以前との差は見られなかった。 p^+-GsAs基板上のn層の条件のうちキャリア密度と膜厚とを変化させて、素子の電気的特性及び発光特性がどのような影響を受けるかについて実験的に検討した。スイッチング特性が得られるためには、表面の空乏層の拡がりが重要でキャリア密度と膜厚の両方に左右される。オフ領域における電流値は、キャリア密度の高い方が少なく、発光強度はキャリア密度の高い方が強く、厚いものほど強くかつ飽和せずに発光した。これは、n層の薄い場合、p^+領域からn層に注入した正孔が発光再結合せずに表面側に到達してしまう正孔の割合が増加することによると考えられる。 電流0-電圧測定と発光強度測定を同時に行なうことにより、負性抵抗領域においては、他の領域と異なり、電流の増加に対して発光強度が増倍的に増加する現象が昨年度観測され、その原因を探るため、発光スペクトルの詳細な測定を直流及びパルス駆動によって行い比較した。発光ピーク波長及び発光ピーク強度ともに、負性抵抗領域において変化割合が急変する特異な振る舞いが直流駆動で見られ、これは、負性抵抗領域において中性のn層の電子密度が急増することと表面空乏層で加速されるキャリアも急増することに関与していると考えている。
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