本研究は、禁制帯副制御によるセレン化銅インジウム・ガリウム(CIGS)薄膜太陽電池の高効率化を目的として行った。具体的には、ガリウム添加量を膜厚方向で傾斜させたグレーデッドバンドギャップCIGS薄膜形成技術の開発と、膜質評価および、これを光吸収層とした太陽電池の試作である。最初の目標であるグレーデッドCIGS薄膜作製に関しては、セレン化法におけるプリカーサ中のガリウム分布がセレン化後もほぼ保存されることをオージェ電子分光法によって見いだし、この性質を利用することによって、所望の傾斜組成の膜を得ることができた。また、生成膜は、オージェデプスプロファイル、X線回折図形からグレーデッドバンドギャップCIGSであることを確認した。つぎにこれらの膜を光吸収層とし、溶液成長法による硫酸成長法による硫化カドミウム超薄膜と、マグネトロンスパッタ法により作製したZnO:Al透明導電膜を窓層としたCIGS太陽電池を試作し、変換効率12.6%を得た。今後さらに、CIGS膜中のガリウム量とその分布形状の最適化により変換効率の向上が見込まれる。
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