研究概要 |
本研究の目的は、エキシマレーザを用いた2ステップドーピング法により浅く、高濃度のドーパント濃度分布を実現し、これをMOSFET作製に応用することである。初年度はドーピング技術の確立を目指した。 シリコン(Si)のドーパントの中で、ボロン(B)と砒素(As)を取り上げ、原料としてはジボラン(B_2H_6)とターシャリブチルアルシン(tert-C_4H_9AsH_2、tBAs)を用いた。後者は一般的に用いられているAsH_3に比べ、安全な原料である。SiへのBのエキシマレーザ2ステップドーピングに関しては、各種データを蓄積してきているので、とくにAsドーピングについて実験を行った。 tBAsの室温における蒸気圧は52Torrであり、また、その吸収特性を調べた結果、226nmにピークを持ち、ArFエキシマレーザの発振波長(193nm)付近にも強い吸収があり、光分解が可能であり、レーザドーピングの原料として適していることがわかった。tBAsを恒温槽で0℃に保ちながら、十分排気したチャンバー内へtBAsを導入した。Siを溶融させるレーザエネルギー密度の1/10以下の強度(53mJ/cm^2)でSi基板を照射し、表面にAs膜を堆積させた。その後、原料ガスを排気し、0.7J/cm^2でレーザ光(照射時間、17ns)を照射し、Siを溶融させてAsをドープさせた。As膜堆積時および溶融時のレーザの照射パルス数やエネルギー密度を変え、ドーピングを行った。Si中のAs濃度は2次イオン質量分析により測定した。堆積時パルス数10、溶融パルス数2のとき、As表面濃度1x10^<21>cm^<-3>、接合深さ0.25mumという所望の結果が得られた。なお、B_2H_6を用いたときには、0.1mumという極めて浅い接合が得られているが、この違いはそれぞれの堆積膜の厚み、吸収特性などの差により溶融状況が異なったためと思われる。B,Asに関して所期の目的がほぼ達成でき、MOSFET作製への応用へ展開できるものと思われる。
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