研究概要 |
構内通信などの無線LAN用ディジタル移動通信に対しては多重波伝搬路によるフェージング(マルチパスフェージング,レイリーフェージング及びライスフェージング)の影響が最も大きい.共通チャンネル干渉については空チャンネル探索送信制御を前提にするので考えない.変復調方式としては,筆者が従来から研究してきて特性解明が進んでいるトレリス符号化多値FSK信号リミッタ・ディスクリミネータ復調,積分放電フィルタリング検波方式を検討した.この方式を用いた理由は,ディジタルFM方式の原形として従来から使用されてきた実績があり、送受信IF回路が簡単で非同期のリミッタ・ディスクリミネータ復調器が使えること,定包絡線信号であり電力効率の良い非線形増幅器を使用できること,フェージング時の受信レベルの検出が容易であることなどによる.また本研究の進展の結果,2値GMSK周波数検波系列推定方式のビット誤り率特性が極めて良好なことが判明し,途中からこの方式についても検討を加えた.このGMSK方式は,すでに汎ヨーロッパのディジタル移動通信の変調方式として使用されている実績があり,本研究で提案した系列推定復調方式を用いることによりビット誤り率特性の改善が期待できる. 具体的には以下の研究項目につき研究を行った. 1)トレリス符号化4値位相連続FSKリミッタ・ディスクリミネータ復調,積分放電フィルタリング検波方式のビット誤り率特性を主として計算機シミュレーションにより検討し,ビット誤り率特性の改善を得た. 2)2値GMSK周波数検波系列推定方式を提案し,この方式のライスフェージング及びレイリーフェージング下におけるビット誤り率を計算機シミュレーションに確認し,従来方式に比べ大きな改善を得た. 3)周波数選択性マルチパス通信路に対し2値GMSK周波数検波系列推定方式を適用し,フェージング特性を適応的に同定することにより,ビット誤り率特性の改善を実現した.
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