1.疑似雑音系列のコンプレクシティ(予測し難さ、解読し難さ)の実用的で便利な評価法として従来用いられているLinear Complexity(LC)の弱点を示す典型的な例として、GF(q)上の周期N=q^n-1のm-系列の最小変更(1周期中の1か所の値を変更すること)により得られる系列のLCが最大値(N)を取ることを証明した。これはm-系列のLCが周期Nの周期系列の中では最小の値(n)を取ることを考慮すると極端過ぎる。 2.LCの定義においてシフト・レジスターからのフィードバック関数を線形同次式に限定せずに任意の1価関数に拡張したMaximum Order Complexity(MOC)が最近暗号の分野で提案されている。本研究では上述のm-系列の最小変更により得られる系列のMOCがn<MOC<2nとなることを証明した。MOCを用いることにより大きく改善されることが分かった。 3.周期N=q^n-1のGF(q)上の系列で最小変更によりLCが最大となるものは、q=2でNが素数ならばm-系列だけであるが、その他の場合にはm-系列以外の系列でもそのような性質を持つものがあることを、具体的に系列を構成することにより示した。 4.周期2^nの2元周期系列のLCの計算についてはGames-Chanによる高速計算法が知られている。本研究ではこの計算法の簡単な導出法を提案し、GF(p)上の周期N=p^nの系列のLCの高速計算法を提案した。その応用としてこのような系列のLCの値の分布と指定されたLCを持つ周期p^nの系列の構成法とを求めた。
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