受信用アレーアンテナにおいて、各素子アンテナの受信信号周波数をn逓倍すれば素子間位相差はn倍になるため素子間隔を縮小しても指向性合成機能が得られる。素子アンテナ間の相互結合による影響を明らかにすることを本年の目的とし、無変調CW波を対象にlambda/4モノポールアンテナを素子アンテナとしてブロードサイドアレーの8字パターンを得る条件で、素子数-逓倍数-素子間隔について検討した。まず2素子アレーについて起電力法による相互インピーダンスを用いて求めた素子間位相差は実測値(アンテナの太さ=2×10^<-3>lambda(lambda=50cm))とほぼ一致し、理論計算には超電力法を用い得ることを確認した。2素子では空間位相差以上の位相差が生じ、従来では8字パターンがlambda/2の素子間隔で得られるが、周波数10逓倍を用いるとlambda/50となり、逓倍数による素子間隔の短縮以上に短縮できることが分かった。次いで4素子の等間隔アレーでは周波数4逓倍で間隔0.016lambdaのときに比較的形状の良い8字パターンが得られ、理論値と実測値はほぼ一致し、理論計算方法の有効性が確認できた。以上の測定には設備備品として購入したモジュラーアンプを用いている。さらに、多素子アレーとして8および16素子の等間隔アレーについて素子間隔に対する各素子間位相差および8字パターンに関する周波数10逓倍までの理論検討を行った。素子間隔が極端に小さくなるため、素子アンテナの太さを物理的実現性を無視して10^<-6>lambdaとした。その結果、ブロードサイドアレーとして最大感度方向(アンテナ配列軸に直角方向)では相互結合のため生じる素子間位相差によって同相合成にならないことが分かった。そこで位相調整を行い8字パターンの得られる素子間隔を調べ、素子数が増すほど素子間隔は小さくなり、周波数10逓倍では素子間隔は8素子アレーで0.00016lambda、16素子アレーで0.0005lambdaとなる結果を得た。
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