研究概要 |
近年のデジタル計算機ハード・ソフトの発達に伴い,Al・ニューロそれにファジィ理論等を用いて,制御技術者や熟練者の制御知識を計算機に組み込み対象システムの動きに柔軟に対応した制御を行う知的制御系の実システムへの適用が進みつつある.現在,これら知的制御系は,制御経験の言語記述や,操業データのモデル化から設計されているが,自由度も多く試行錯誤的に構築されている. 本研究では,ファジィ制御と従来制御理論との関係を考察し,従来制御方式の制御系構築支援ツールを基盤として従来制御方式の構築手法と連続性を持ち,それを包含した定量的なファジィ評価に基づく知的制御系の構築手法の開発を目指した. 本研究では,以下の2テーマについて知的制御系を構築し実験評価を行った. (1)ラフな対象システムモデルに基づき幾つかのPID制御系を構築し,これらをファジィ推論により切り換えて調整していく階層型ファジィ制御方式を提案した.この方式を,幾つかのプラントモデルや無定位性プロセスの実験装置に適用した.シミュレーションおよび実験の結果,設定した望ましい応答を実現出来る制御系を構築できた. (2)自動車の駐車制御における運転知識を組み込み,定量的な到達目標(目標位置誤差と方向誤差)の評価に基づく知的制御系の構築を行い,シミュレーションにより評価した.さらに,この制御系1/10スケールの模型自動車に搭載して走行実験を行なった.その結果,構築した制御系により,上手い運転が実現出来ることを確認した. 本研究の結果,対象システムの望ましい応答や到達目標に関する制御技術者の知識(制御に関するメタ知識)を、あいまいさを定量的に扱えるファジィ集合に基づく評価指標として与える事により,従来の制御手法の延長では困難であった知的制御系構築の可能性を確認することが出来た.
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