研究概要 |
今年度はまず,昨年度の実験システムを重量,信頼性の点で大幅に改良した.これは,蝶番状の駆動ユニットにマイクロコンピュータとセンサを搭載したものをサブシステムとし,これ多数つないで自立するキャタピラを構成したもので,動作目標はサブシステムの自律分散的動作により全体が自転・移動することである. 次に,サブシステムごとの相対角度・角速度と接地情報,および両隣のサブシステムの情報だけを用いて自転に必要なトルクパターンをもたらす分散トルク制御則について検討した.まず,試行錯誤で得た初期制御則を,関数木表現に基づく遺伝的プログラム法と,数値マップに基づく遺伝的アルゴリズムの2種類の手法で改良し,それぞれ特徴のある制御則を得た.さらに,初期制御則を得るために,システム全体の状態軌跡を与え,線形計画法により各サブシステムに必要なトルクを求める手法を確立した. 一方,サブシステム個々の制御系を分散位置制御系とし,外力への応答特性を状況(役割)に応じて調節することによってサブシステム間の協調をとり,自律的にシステム全体の移動を実現する検討も行なった.その結果,外乱オブザーバと2自由度ロバストサーボ系の組み合わせによりサブシステムの外力応答モデルを変化させ,大まかな相対角度パターンを与えれば移動が実現できることを確認した. そして,以上を3次元アニメーションを駆使したシミュレーションと実験システム上での実験によって検討し,分散トルク制御則については傾向としてはほぼ理論どおりの結果を得たがややトルク外乱の影響を受けやすいことが,また,分散位置制御方式では逐次的に進む動作は実現できたが動作の滑らかさの点で劣ることが分かった.今後は,両方式の融合によって上記の問題を解決するとともに,各サブシステムに持たせるインテリジェンスについてさらに検討し,システムの自律性を追求して行く予定である.
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