平成5年度においては、不確かな係数パラメータをもつ多項式で表現されるシステムに対して、パラメトリックなリヤプノフ関数の構成法について検討した。その結果、その特性が多項式ポリトープで記述される不確かな連続時間線形システムに対して、二次形式のポリトープ型リヤプノフ関数を構築することができた。これはまさしく目標としたパラメータ依存のリヤプノフ関数である。この結果を踏まえて、平成6年度の目標は、並行した結果が適当な不確かな非線形システムに対しても得られるか否かを吟味することであった。シミュレーションを含む数値的な経験を積むとともに理論的な検討を重ねた結果、非線形システムの場合はパラメトリックなリヤプノフ関数の構成について一般的な法則を述べることは困難で、むしろ逆に不確かさに対して固定した共通のリヤプノフ関数の存在を考える方が現実的であるという結果を得た。そこで、第2年度の後半では、共通リヤプノフ関数の存在というむしろ逆の観点からの問題提起をうけて、もう一度線形システムに立ち戻って検討を開始した。その結果、現在までのところ、状態空間表現された複数個の離散時間線形システムに対して、共通な二次形式リヤプノフ関数をもつシステムのクラスをいくつか特定することができた。この結果は、行列ポリトープでその特性の不確かさが表現された離散線形システムに対して、二次安定性の十分条件を与えている。共通リヤプノフ関数の存在は、非線形システムをも取り扱い得る可能性が大きいという利点を導びく。今後、この線に沿った非線形システムへの展開が期待される。
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