研究概要 |
本研究の目的は、感性実現の第一歩として、比較的感性に結びつき易い色を対象に、TVカメラの色情報から、美しい-汚い、暖かい-冷たいなどの感性情報を取り出すシステムを実現することである。本年度は次のような順序にしたがって研究を進めた。 1.色感性情報獲得のための心理実験:被験者に標準光源で照射されたJIS準拠の標準色票を一定の方向から観測させ、感性の心理的評定を行った。 2.TVカメラからの色情報の獲得:心理実験と同じ設定条件で、色票をCCDカラーカメラで撮影し、それらの画像を記録した。 3.ニューラルネットワークの構成:カメラ出力のRGB値を人間の視細胞のRGB錐体の出力と考え、ニューラルネットワークの入力はRGB値、出力は感性情報とする5層のネットワークを構成した。 4,色感性システムの実現:心理実験で得られたデータを用いて、ネットワークに学習させ色感性システムの実現を図った。 以上のように,平成5年度は5層ニューラルネットワークを用いて、「暖かい-寒い」と「軽い-重い」の2つの感性情報を出力するシステムを構築した。5層のうち第1層目は入力層で、第2,3層は色覚モデルを参考にし、第4,5層で感性を処理するネットワークを構成した。学習結果は良好で一つの色感性システムを実現したといえる。しかし、学習に用いてないデータに対する汎化テストでは、色自体の物理量(RGB値)の変化は小さいにもかかわらず、人間の感性の変化が大きい色(例えば、紫と青)については必ずしも良好な結果とは言えず、今後中間層のニューロンの内部解析に基づくニューラルネットワークの構造の改善が必要である。
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