研究概要 |
本研究の目的は,ニューロコントローラの設計を行い,それをプロセス制御問題へ応用し,その実用性について考察することである.本研究では,直列型,並列型,セルフチューニング型という3つのタイプにニューロコントローラを設計する.直列型ニューロコントローラに対しては,ニューラルネットワークによる直接逆システムを構成している.並列型に対しては,フィードバック誤差学習を行っている.第3のタイプのセルフチューニング型に対しては,セルフチューニングPID型ニューロコントローラを設計している.ここでは,比例,積分,微分ゲインをニューラルネットワークによって,目標値とプラント出力との偏差平方が最小となるようにチューニングする手法を提案している.これらのニューロコントローラに対して,様々なシミュレーションを行い,プラントの逆ダイナミクスの獲得や,PIDゲインのチューニングをオフラインで求め,コントローラの性能の評価を行う.つぎに,そこで得られたパラメータを初期値として,ニューロコントローラをプロセス制御問題へ応用し,その有効性について実験的検証を行う.ここで用いる実験システムは,恒温槽の温度制御,加熱炉の温度制御,倒立振子の安定化制御,電気自動車のトルクおよび速度制御システムである。まず,恒温槽と加熱炉の温度制御に関しては,通常のPID制御,適応制御方式と比較して,ノイズや目標値変化に対してロバストな制御性能をニューロコントロールが有していることが示される.さらに,倒立振子の安定化制御および電気自動車のトルクおよび速度制御などのような振動現象を呈する2次系のシステムに対しても,本研究で提案したニューロコントロールシステムは優れた制御性能を示すことが実験的に検証された。とくに,セルフチューニングPID型ニューロコントローラは,従来のPID制御よりもかなり良好な制御性能を与えることが示された。
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