研究概要 |
本研究課題の目的の一つは、申請者らが提案したロバストILQ設計法を「磁気浮上制御問題」に適用し、その有効性と問題点を明かにし、必要に応じて設計法の改良を行うことにある。そのため本年度は,当初の研究計画である(1)磁気浮上装置とその制御システムの製作,(2)磁気浮上系のモデリングと制御系設計,(3)制御の実施と評価,(4)設計法の改良,を実施に移した。(1)については,3組の電磁石と駆動電源およびY字型鉄片(浮上体)から成る磁気吸引浮上装置を製作した。また制御システムは,観測装置を渦電流式変位センサーで,制御装置をPC-9800,AD/DAボードとトランスピュータで構成した。(2)については,まず駆動電源,電磁石,浮上体とセンサーから成る磁気浮上系の線形状態空間モデルを作成した。つぎに,ロバストILQ設計理論に基づき設計用CADを作成し,それを利用して浮上と姿勢制御を目的としたサーボ系を設計した。(3)については,(2)で得られた制御を実施した際に,センサーノイズによってモデリング時に無視した振動モードが励起され,それが場合によって不安定現象を引き起こすことが判明した。そこでこの振動モードの固有周波数帯域を測定し,この付近で観測雑音の影響をできるだけ抑えるように設計パラメータを選定した。その結果,浮上体の振動がおさまり,非常に安定な浮上および姿勢制御に成功した。特に姿勢制御については,センサーの測定限界まで浮上体を変位させても,制御系は安定に動作し,本制御系が非線形性や動作点の変動に伴うモデル化誤差に対し,非常にロバストな制御系であることが実証された。最後に(4)については,今回の制御対象と制御目的に関しては,特に適用上の問題点は認められなかった。しかし,今後予想される適用範囲の拡大を考慮して,ロバストILQ設計法の基礎となるILQ設計理論について制御対象と目標入力の適用範囲を拡張した。
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